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執筆者の写真矢口洋子

食習慣の欧米化と骨粗鬆症の増加 医学博士 小窪正樹




 糖尿病と同様に骨粗鬆症も戦後日本で急速に増加しました。

 終戦当時のカルシウム摂取量は一日300mg以下と言われていますが、ほとんど骨粗鬆症は見られませんでした。

 それが今は当時より明かにカルシウム摂取量が増えている(一日約510mg、2008年厚生労働省健康局資料)にもかかわらず、骨粗鬆症は人口のおよそ10%、1000万人に達すると推定されています。

 牛乳や乳製品、肉など欧米食では日本食よりむしろ含有量は多いのですが、残念なことに、骨粗鬆症も明らかに増大しているのです。

 このような報告があります。アフリカのバンツー族は、カルシウム摂取量が一日350mgと少なく、肉はほとんど食べません。これに対してイヌイット人はカルシウム摂取量は一日2000mgと非常に多く、同時に大量の肉を消費しています。どちらに骨折が多いでしょうか?

 なんとイヌイット人は、世界で最も骨折が多く、バンツー族にはほとんど骨折が見られないのです。

 この事実は骨粗鬆症と関係しているのはカルシウムではなく肉食であることを物語っています。

 世界保健機構(WHO)は、カルシウムの摂取量が多い国に骨折が多いというカルシウム・パラドックスの理由として、カルシウム摂取量よりも、カルシウムを排出させる酸性の負荷がたんぱく質によって多くもたらされるためであると推論しています。

 また、海外の骨粗鬆症診療ガイドラインでは、砂糖や動物性食品は酸性食品でありカルシウムを奪う「骨泥棒」であるとされ、予防のためにはアルカリ性食品、すなわち野菜や果物を多くとるように推奨しています。

 日本の骨粗鬆症ガイドラインでは、カルシウム製剤の有用性を示すエビデンスは乏しく、推奨度はグレードCにしか過ぎません。

 *グレードC

  A 強く勧められる。

  B 勧められる。

  C 勧められるだけの根拠がない。

  D 行わないよう勧められる。

 医学的にエビデンスありとして勧められるのはAとB。

 このような医学的事実にもかかわらず、日本では骨粗鬆症の予防に対して牛乳などのカルシウム摂取が声高に叫ばれますが、肉食への警告は無視され続けているのです。

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